はじめに
嘱託警察犬として、行方不明者の捜索をしていたところ、ご遺体での発見となりました。その時の捜索犬の挙動を参考まで報告致します。
日時
5月上旬 午前中
場所
人里離れた山奥の笹やぶの中
天候
晴れ
原臭
行方不明者の帽子、靴からウェットティッシュで移行臭を採取し、加温ポットに入れて捜索現場に携行し、原臭として使用した。
捜索状況
山中において、原臭を嗅がせ、首に鈴を付けて、リードなしで捜索を開始した。
捜索犬は、細い山道を50mほど前進し、突然、左側の笹やぶに入り、風下から風上方向に進んだ。犬自体は笹やぶに隠れて見えなくなったが、鈴の音と笹のゆれで犬の動きと位置が分かった。
犬は30mほど蛇行しながら進み、突然停止した。すぐに犬のそばに行ったところ、笹やぶの中にうつぶせのご遺体があった。犬は吠える事も無く、ご遺体のすぐそばに立止して指示を待っていた。
「発見しました」 と後続の警察官に報告し、犬にリードを付け、訓練の時のように褒美のボールを与えて、その場から山道へ戻った。 この捜索に要した時間は約2分であった。
まとめ
日頃から行方不明者の捜索訓練は、もちろん生体を使って行っており、発見した場合は、吠えてハンドラー(指導手)に知らせるように厳しく訓練をしています。
今回、捜索犬は、発見しても全く吠えませんでした。生体と遺体の違いだと思います。行方不明者の吐く息を犬が捜索の指標としているからだとの意見もありますが、私たちにとって一番大切なことは、ハンドラーは常に犬の挙動を観察して、犬の反応をチェックする必要があるということです。
救助が目的で捜索していても、犬が遺体を発見した場合は、吠えない場合があるということを常に頭に入れて捜索する必要があると思いました。
NPO法人災害救助犬ネットワークの捜索活動では、犬の反応を絶対に見落とさないように、1頭の犬に複数のハンドラーがついて、犬の挙動を観察しており、今回の体験からそのことがよく理解できました。
(岩本良二)
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